まともな能力? 超能力は、まともじゃないってこと?
「だいたい、超能力なんて誰も信じてくれないだろ。実演して見せても、マジックや
手品の類だ、仕掛けがあるに違いないと、勘ぐられるだけだ。好気の目に晒されて、
周りからは敬遠され、孤立していくんだ」
 なんだろう。陸くん、随分とネガティブ思考の持ち主だな。
「でも、それを人の役に立てていけば、周りの人からも感謝されるんじゃない?」
 とささやかな抵抗を試みる。
「役に立つ……。誰の役に立つのか……が問題。それに……」
 と、ここで陸くんが言葉を切り、
「いや。何でもない」と話を無理矢理に終わらせた。

 陸くんは何を言いたかったんだろう。どんな言葉を飲み込んだんだろう。
 そのまま、暫く無言の時間が続く。

 道路の両側の風景が変わってきた。
 畑や平地が疎らになり、木々の数が増えてくる。
―次は森林公園前。森林公園前。お降りの方はブザーを押して、お知らせ下さい―
 目的地への到着を告げる車内アナウンスが、二人の沈黙の壁を融かす。
「陸くん、もう直ぐだよ」と声をかけ、降車を知らせるブザーのスイッチを押す。