「わ、私じゃないよぉ」と否定してみる。
 それに対し、陸くんが
「天野さんだよ。昨日だって、天野さんの手の動きに合わせて、車が空中を動いた」
 と反論する。
 あれっ? あの時、陸くんは目を瞑っていて、何も見ていなかったんじゃ?
「そう、そう、そう。そうなんだよ。だから、俺も最初は美幸を疑った」
 私の思考に、アッキーの言葉が割り込む。
「私も、そう……」とシーちゃんが続ける。

「私じゃないってば! さっき、実験で見事に水かぶったでしょ、私」
 と懸命に抗弁する。
「うーむ」
 一時の興奮が冷めたのか、アッキーが落ち着きを取り戻し、腕組みで考え始める。
 暫くの沈黙のあと
「一つ、試したいことがある」とアッキーが告げる。
 全員の目が集まる。
「美幸。一回、部屋から出て貰えるかな?」
 私? と念を押す。
「そう。少しの間だけ頼む」と真顔で返されたので、そのまま廊下に出る。
 アッキーが内側から引き戸を閉める。

 部室の中で、何やら遣り取りが行われている。
 内容は聞き取れない。
 ……。
 少しの沈黙のあと、「ワッ!」と悲鳴が聞こえた。
 陸くんの声?
 部室の引き戸が開かれ、中に招じ入れられる。
 椅子に座った陸くんが、タオルで顔の水を拭っている。
 と、いうことは……。陸くん、超能力が使えなかったって事?