「だからって、超能力なんてことないでしょ。漫画やアニメの見すぎだよ」
 シーちゃんによれば、陸くんは中二病だって話だけれど、目の前にいる陸くんは、
至極まともな事を言っている。
「それにさ、あの場に居たのは、僕らだけじゃないでしょ。車の運転手がいた」

 むむ。今明かされる新事実。てか、確かに運転手が居たっけ、完全に失念してた。
 助けを求めるように、アッキーの顔を覗く。
 盲点を突かれて困っているかと思いきや、アッキーは平気な顔だ。

「実は、その点は気がついてた。だけど、もし、運転手がエスパーだったとしたら、
商売道具の車を用水路に落としたりしないだろ。だから、彼はエスパーじゃない」
 なるほど……。賢いな、アッキー。
 今度は、陸くんのほうに視線を向ける。
 その陸くん、大袈裟に溜め息をつき
「はい、はい。どうしても、僕を犯人にしたいわけね」と肩を落とす。
 その姿が、あまりも切なげだったので、元気づけるつもりで
「犯人だなんて、そんな風に思ってない。むしろ逆。もしも自分がエスパーだったと
したら、素晴らしいと思わない」と言葉をかける。
 ところが、陸くんは恨めし気に私を見つめ、
「素晴らしい事なんか、あるもんか」と妙に達観した台詞を吐いた。
 私が、その意味を理解できないでいると
「とにかく。僕は何もやってない。車が迫って来たんで、驚いてひっくり返った後、
ずっと目を瞑ってて、何も見てないし、何もやってない」と強い調子で断言した。