「いや、俺。いたって真面目だから。皆も見たろ? 昨日、自動車が宙に浮くのを」
「でも、あれは車が何かに当たって跳ねたんでしょ」とシーちゃん。
「いや、そんな事はない。自動車が空中で静止してるのを、この目で見た。それに、
用水路に飛び込むときだって、放物線じゃなくて真っ直ぐに動いてた」
「まあ、それは確かに……」とシーちゃんが同調する。
「あんな物理法則に反した動きは超能力でしか説明できない」
 うんうん。と私は同意。
「で、その超能力なんだけど……。俺は、美幸がエスパーじゃないかと思ってる」

「えー!! ちょっと、何言い出してくれてんの。そんな事ある訳ないでしょう」
「俺、見たんだよ。美幸の手の動きに合わせて車が動くのを。詩織だっておなじ物を
見たって、言ってる。だから、超能力を使ったのは美幸。そう考えるのが自然だ」
「なに馬鹿なこと言ってるの。私が超能力なんて使える訳ないでしょ」
 自分でもそう思って、昨日はお風呂場で試してみたけど、全くの空振りだった。
「ほんとに?」とアッキーが私の目を見る。
「ほんとに!」とアッキーの目を覗き返す。

「はぁー。だよなぁー。昨日の美幸の驚き方見れば、意識して超能力使ってるとは、
思えないもんなぁ」
「意識も何も、超能力なんて使ってません!」
「いや、使ったんだよ。だから、俺が考えるに、無意識に使ったんじゃないかな」
「無意識に?」
「そう。昨日の……えーと誰だっけ、佐藤陸だっけ、彼が車とぶつかりそうになった
のを見て、思わず超能力を使った。火事場の馬鹿力とか、窮鼠猫を噛むかとかみたい
に、無意識で突発的に超能力が発動した。そんなじゃないかな」
「無意識で……かぁ」
「そう。だから、実験をしてみる価値がある」