「頭が良くて、スポーツも出来て、見た目が良くて、性格が良くて。これで、四物で
しょ。あと、歌が上手くて、絵も上手で……」
 隣を歩くシーちゃんが、指を折って私の美点を数え上げる。
「料理が得意、裁縫が上手、ダンスはプロ級。それと、英語がペラペラ。簡単に十物
いってるじゃん」
「最後のは、十二歳までアメリカで暮らしてたのが理由なんだけど……」
「理由は何でも、凄いよ。(*´Д`)ハァー、そのうちの一つくらい、私に頂戴」
 と大袈裟な溜め息をついてみせる。

 私の名前は天野美幸。
 市内にある高校に通う高校二年生。自分ではごく平凡な女の子と思っている。
 苗字が天野なのに掛けて、『天の恵みを受けて、美しく幸あれ』
 両親が、そんな意味を込めて名付けてくれたのだそうだ。
 自分でも気恥ずかしくなる名前だけど、気に入っている。

 名は体を表すで、私は幾つもの天分に恵まれている。とよく言われる。
 親友のシーちゃんは、私を評して『十物』などと呼ぶけれど、実はそんなに多才な
わけではない。私に才能があるとするならば、それは物事の要点を掴むのが上手、と
いう才能だ。
 勉強でもスポーツでも、こうやれば上手くいくという要点が、自然と汲み取れる。
 分かりやすく言うと、カンが良いとか、要領が良い、ということだ。