走る。走る。
 何に向かって走っているのか、なぜ走っているのか分からない。
 それでも、懸命に走る。
 地上《ここ》から離れようとしている、あの人を追って。
 なぜ、あの人を追うんだろう。あの人って誰だろう。
 それでも、私は走る。
 私は……、私はあなたの事が……。
 
 空が開けた。
 公園の中央にある小高い丘に立ち、南の空に腕を伸ばす。
 その手の先には、青い空が広がっている。
 ロケットの輝きも、その噴煙も遥か彼方にあるんだ。
 いくら目を凝らしたって、見えっこない。
 手を伸ばしたって、届きっこない。

 だけど、この瞬間、私ははっきりと理解した。
 私は、あの人に恋してるんだって。
 名前も顔も分からないあの人に、私は恋焦がれているんだって。

 だから、私は、あなたを追い続ける。
 たとえ、あなたが地上から飛び去ったって、私はあなたを探し続ける。
 そして、私は、必ずあなたを見つけ出す。
 私達は、いつか必ず巡り会える。

 だって……。
 だって、私達は。
 愛し合っているのだから。