カメラがスタジオに切り替わり、アナウンサーが急を告げる。
「只今、最新の情報が入って来ました。トリフネは本日10時に打ち上げられます。
行先はセルベルク。搭乗者はソラシドレスキューの二人。目的は……、セルベルクの
軌道変更……」
 その後、画面は政府のプレゼン会場、スタジオ、現地映像と目まぐるしく替わる。
 途中で
「ここからは宇宙局配信の画像に切り替わります」
 とアナウンスが入り、大写しになったトリフネの画像が現れる。
 先ほどとは違って、直ぐ近くから撮られた鮮明な画像だ。
 私はその映像を見てハッとなる。
 私、このロケットを見たことがある。
 見ただけじゃない。このロケットの直ぐ近く、手で触れるられる程の場所に、私は
居た。
 画面にロケットの下部が映し出される。カメラは、そこから上方にパンしていく。
二段目、三段目に続き、フェアリングに覆われた先端部分が見えてくる。
 ここだ、私はここにある宇宙船の中にいた。その時の座席の密着感を今でも覚えて
いる。
 そして、私の隣には誰かが居た。
 そう……。誰か……。
 でも、私はその誰かの顔も名前も思い出すことは出来ない。
 嗚呼、そして何だろうか、この気持ちは? その人を思い出そうとするとき、私の
胸を焦がすこの思いは?