「今なら、新しい情報があるかも知れないわね」
 と、お母さんがテレビのスイッチを入れる。
 次の瞬間、画面に映し出されたのは、宇宙センターにあるロケットの映像だった。

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「只今、現地からの映像をお届けしています」
 テレビからリポーターの緊張した声が聞こえてくる。
 画面に、発射台に据えられたロケットの様子が写し出される。
 かなり遠方から撮られているのだろう。画像が大気でゆらいでいる。

「現地では何か変化がありますか?」
 スタジオのアナウンサーが尋ねる。
「はい。つい先ほどですが、ロケットに繋がれていたパイプ類が外され、ロケットの
下部にあるプールに注水が開始されました」
 リポーターの報告を受けてアナウンサーが反応し
「この変化はどういう意味があるんでしょうか」
 と隣に控えた解説者に説明を促す。
「燃料注入が完了したということですね、それに煙道に注水していますので、発射が
間近に迫っているということです」
 解説者が答える。

 煙道:発射台下部にあるロケット燃焼を逃がす溝。発射時に水が張られる。