キューン。
 嗚呼、思い出そうとすると、なぜか心が切なくなる。この気持ちは何なんだ。この
胸の疼きは何なんだ。
「とにかく。無事に戻ってくれて良かった。お腹空いてるでしょうから、ご飯にしま
しょう」
 お母さんにエスコートされて、ダイニングキッチンの椅子に座る。
 私が、思い出せない一日の記憶を辿っている間に、お母さんがホットココアを用意
してくれた。
「これを飲みなさい。体が温まるから」
 ありがとう。と、ココアを口にする。お腹の中が温かくなり、緊張が緩む。
「ねえ、お母さん。昨日から今日にかけて、何があったの?」
「母さん、あなたの事が心配で、ほとんどテレビを見てないの。でも、矢田部首相が
テレビ出演して、ソラシドレスキューに救援要請してたわね。幾度も」
「ソラシド……レスキュー?」
「知らないの? 若い男女の二人で、超能力者じゃないかって言われてる。首相は、
その人達に、南九州宇宙センターに来るように要請していた」

 ソラシドレスキュー。若い男女。超能力者。
 全ての単語が私の心に響く。
 でも、それが何を意味しているのか、思い出せない。
 そして、記憶を掘り起こそうとする度に、私の胸を襲う、この切なさは何なんだ。
 悲しく、寂しい、でも、その向こうに温かさを感じる、この思いは何なんだ?