「そう言ってくれるのは嬉しいよ。だけど、それは出来ない。僕は、争いの元になる
人間なんだ」
「そんな……」
「それにね。君には、僕の事を忘れて貰う」
「私の記憶を消すってこと? 私、陸くんの秘密を人に話したりはしない、決して」
「分かっている。君のことは信じている。でも、僕がエスパーだと知っている事が、
君にとって危険なんだ。アッキーやシーちゃんの記憶は既に消した。トリフネが発射
する時には、宇宙基地の人達の記憶も消すつもりだ。だから、君も……」

「そんな……。私は……、私は陸くんを忘れたくない。だって……、だって……」
 有りっ丈の涙とともに、陸くんに抱き着く。
「私は、陸くんの事が……、好きなの」
 胸の奥底にしまい込んでいた、秘密を打ち明ける。
「美幸さん」
 陸くんが、私の髪を梳る。
「僕も、美幸さんのことが好きだ。ずっと、前から」
 私を抱きしめる陸くんの腕に力が入る。
「陸くん」
 私も、強く抱き返す。
 体温が通い合う。呼吸が重なり、心音が同じリズムを刻む。
 嗚呼、このままずっと二人きりでいたい。こうして重なり合っていたい。