陸くんが、強い眼差しで私を見つめ、意を決したように話を始める。
「最後に、辛い話をしなくちゃいけない。美幸さん。君とは、ここでお別れだ」 
「お別れ? お別れって、どういう意味?」
「僕はね、このミッションが済んだら、セルベルクとともに地上》から消える」
「消える? それって、地球に戻れないってこと? でも、さっきの瞬間移動なら、
帰って来れるんじゃないの?」
「セルベルクは、秒速数十キロで移動してるんだ。そんな条件のテレポートは経験が
無い。帰れるかどうかは、僕にもわからない。それに、もし地球に戻れたとしても、
僕は自分の存在を消すつもりだ」
「存在を……消す?」
「星の軌道を変える程の能力。その存在が知れたら、国家レベルで僕の超能力を奪い
合うことになるだろう」
「国家レベル? 戦争?」
「そうなる可能性がある。だから、僕はセルベルクとともに地球を去った。そういう
風に、このミッションを終わらせる必要があるんだ」
「そんな……」
「だけどね、僕の存在を消しただけでは、不十分なんだよ」
「……?」
「君だよ。美幸さん」
「私?」
「世の中の人は、ソラシドレスキューは二人ともエスパーだと思っいてる。そのうち
一人がいなくなったら、残ったもう一人のエスパー、つまり、君に追及の手が向かう
事になる。それでは駄目だ。ソラシドレスキューは二人とも地球を去った。世の中の
人たちにはそんな風に思わせておく必要があった」
「……」
「だから、トリフネが閉じられるまでテレポートを待った。周囲の人々に気取られぬ
ように、君にも事実を告げづにいた。そのせいで、美幸さんには不安な思いをさせて
しまったね。すまなかった」
「ううん。分かってる。そんな事より、お別れだなんて悲しいことは、言わないで。
地球に戻って来て。陸くんの事は、私達が守る。私達たけじゃない。世界中の人達が
陸くんを守ってくれる」