自席に腰を降ろし、鞄からノートを引っ張り出して顔を扇ぐ。
 私、なんだって赤くなってるんだろう?
 陸くんと話したからかな???
 自分でもよくわからない。
 陸くんは大人しくて目立たない子なので、話をしたのは、多分初めてだ。
 顔だって、「あれっ、こんな顔だった」って程度にしか覚えていなかった。
 男子の中では小柄。顔は子供っぽい造りで、伸ばした髪が目に掛かっている。
 可愛い系の顔立ちだけど、笑顔を見せないせいで、損をしていると思う。

 そんな事を考えているうちに、シーちゃんとアッキーが登校してきた。
 シーちゃんは私の右隣、アッキーは少し離れた廊下側に席がある。
 シーちゃんが隣の席にすわる。
 お早う。
 お早う。
 の挨拶のあと、シーちゃんが顔を寄せてきて、耳元で
「美幸。また、今日も先に行っちゃったでしょ。最近、ずっとそうじゃない?」
 と囁く。
「う、うん、朝早い方が涼しいから……」
 と公式見解を伝える。
「もし、私とアッキーとの事を気遣ってるのなら、そんな心配することないからね。
私は大丈夫だから。アッキーは頼りないけど、私は大丈夫だから」
「でも……」
「でもも、しかもないの。私は、あなたの方が心配だよ。他の人の気づかいばっかり
しててさ。独りボッチになっちゃうよ。少しは自分の心配しなさい」