陸くんが穏やかな眼差しで私を見つめる。私もその瞳を、温かい心で出迎える。
「ありがとう。美幸さん、君と巡り会えて、本当に良かった」
「私も……」
 二人の距離が少しづつ縮まる。
 手と手が触れ合う。
 陸くんの顔が近づいてくる。
 嗚呼、これは……。青春の甘酸っぱい体験の予感。
 私は目を閉じて、その瞬間を待つ。

「美幸さん。その先の話をしなくてはいけない」
 その台詞で現実世界に引き戻された。
 陸くんが腕組みをして部室の壁に寄り掛かる。
 うーん。今、いい感じだったのに。と思ったけど、口には出さずにおこう。