「僕は……」
 陸くんが口を開く。
「僕は、自分の力を呪っていた。何でこんな力を持って生まれて来たのか。その力の
せいで友達を失い、故郷を追われ、世間から身を隠す事を強いられた。僕は、自分が
超能力者として生まれた事が、嫌でいやで仕方なかった」
「……」
「そんな頑なな僕の心を融かしたのは君だ」
 陸くんが私に向かって柔らかい笑みを作る。

「あの時、取り残された僕たちの元に、ネロがやって来たのを覚えてる?」
「覚えている。白カラスのネロ。陸くんの『お守り』を見つけてくれた、賢い子」
「そう。君は、そのネロの姿を見て、こう言った。『ネロは望まれて生まれてきた。
氷河期に保護色となる白化の形質を未来に伝えるために』」

 たしかに、私はそんな事を言った記憶がある。そして、その言葉に陸くんが感銘を
受けていたのも覚えている。
 陸くんが話を続ける。
「その言葉で人生観が変わった。僕が力を持って生まれて来たのには、意味がある。
僕は未来に力を繋ぐために生まれてきた。そう思えるようになったんだ」
「陸くん……」
「力を繋ぐためにはどうすべかを考えた。それには、力を認めて貰う事だ。超能力は
決して恐怖の対象じゃない。人の役に立つものなんだって」

 そうか。あの日を境に、陸くんがソラシドレスキューの活動に積極的になったのは
そんな理由があったんだ。