お守り。
 陸くんが首に架けたお守りを私の前に差し出す。
「これは、只のお守りじゃないんだよ」
「……?」
「これには、超能力を抑える効果があるんだよ」
「超能力を抑える?」
「原理も出所も分からないけれど、僕らの先祖は大昔に、この石を手に入れた。この
石を身に着けていると、超能力が千分の一にも、万分の一にも弱まるんだ」
「そんなに?」
「そうさ。僕がソラシドレスキューで使っていたのは、力のほんの一部に過ぎない。
そして、テレパシーやテレポート等の大技は、この石を身に着けている時には、使え
ないんだ」
「どうして、そんな物をいつも身に着けているの?」
「僕らの先祖は、自分の力を隠すためだった。だけど、僕の場合は、ちょっと事情が
違う。僕は、特に力が強い体質なんで、その石がないと力が暴走してしまうんだよ」
「暴走?」
「細かい制御が効かなくなる。貯水塔の中で超能力を使わなかったのは、そのため。
あそこで力を使ったら、塔自体が壊れてしまっただろう」
 そうか、あの時、超能力が使えなくなったのは、そんな理由があったんだ。

「塔に閉じ込められ、力も使えない。弱気になった僕は、ソラシドレスキュー解散の
話を口にした」
「……」
「でも、そのあと、僕は美幸さんから天啓を受けた。生き方を変えるほどの……」
 私の天啓? 生き方を変えるような?
 何の事を言っているのだろうか? 私には思い当たる事がない。
 けれど、目の前の陸くんは、敬意を込めた眼差しで私を見つめている。
 私は、はにかみ乍ら視線をそらし、慎重に陸くんの次の言葉を待った。