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「記憶を消す?」
 そう言えば、陸くんは記憶喪失なのだと、陸くんのお母さんが、言っていたっけ。
「でも、どうやって?」
「テレパシーを使って、特定の記憶を思い出さないよう暗示をかける。昨日の夜に、
君を寝かしつけたのも、その応用。でも、テレパシーはいつでも使える訳じゃない。
その事については、後で話す」

 陸くんの告白は、この後も続く。

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 自分達の記憶を消した後、僕達はこの町に越してきた。
 僕は、平凡で平和な人生を過ごす筈だった。
 だけど、事件が起こった。
 夏休み前、学校近くの坂で、自動車事故に巻き込まれそうになり、思わず超能力を
使った。それと同時に、消した筈の記憶も蘇った。
 封印した力を使った事で僕は焦った。しかも、その様子を君達に目撃されている。
 何とかしないと。
 だけど、久しぶりに超能力を使った反動で、僕の意識は薄れていく。
 その時、美幸さんが僕の方に手をかざしているのに気がついた。
 僕は咄嗟の判断で、君の手の動きに合わせて、空中の自動車を動かした。
 でも、そこまでが精一杯で、僕は気を失った。
 救急車で病院に運ばれ、ベッドで目を覚ました僕は、アレコレ善後策を考えた。
 直ぐに皆の記憶を消すのが最良なんだけど、超能力を復活させたばかりで、そんな
大技は直ぐに使えそうもない。だから、暫くは素知らぬ顔を通して、様子を見る事に
したんだ。