私は光に抱かれている。
 体の重さを感じない。無重力空間にいるようだ。
 先ほどまで感じていた、座席の密着感もない
 宇宙船内の電子音も聞こえない。
「ここは?」
 と声を出しても、音にならない。
 私は光に満たされた静寂の世界を、何の感覚もないままで漂っている。
 いや、一つだけ感覚があった。
 それは、私の手を握る陸くんの手の感触だ。
 その温もりと湿りけが、私の心に安らぎをもたらす。
 このまま光のゆりかごの中を漂っていたい。
 そんな気分だ。

 と思った刹那、私は重力のある世界に引き戻された。
 視界から光が消え、体に重みが復活する。
 トンッ。
 次の瞬間、階段から飛び降りたような衝撃を足の裏に感じた。
 それと同時に、自分が地面の上に立っている事に気がつく。
 恐る恐る目を開けると、見覚えのある光景が飛び込んできた。
「ここは……?」
「AI部の部室だよ」
 私の問い掛けに、陸くんが落ち着いた声で答える。
 たしかに、そこは見覚えのあるAI部の部室だった。
 その中に、青い船内服を着た陸くんと私が立っている。