船外からの反応は無い。管制室の様子にも変化はない。
「本当に、回線は切れてるみたいだ」
 陸くんも漸く納得したようだ。
「じゃぁ始めよう。美幸さん、与圧服の手袋を外して」
 いよいよ、陸くんの秘策が始まるのだ。
 そう、直感した私は陸くんの言うとおりに、両腕の手袋を外す。
 陸くんも手袋を外し、ヘルメットのバイザーを開く。
 陸くんは、バイザーの隙間から与圧服の中に手を突っ込み、首の辺りをまさぐって
何かを取り出した。
 鈍く黒光りする細長い石。陸くんの『お守り』だ。

「美幸さん。この石を右手で握っていて」
 手渡された『お守り』を右手に持ち替えて握り締める。
「次は僕の右手を握って」
 言われた通りに、左手で陸くんの右手を握り締める。
「目を瞑って。眩しくなるから、目は開かないように」
 言われるままに目を瞑ると、すぐさま瞼の向こうが明るくなって来た。
 何だ!? 何が起こるんだ。
 そう思う間もなく、眩しさが増していく。
 そして、私は強烈な光の中に包まれていく。