ハッチの向こうで気密確保のロックが閉じられる音がする。

 それに引き続いて、船外で何かを打ち付ける音が響く。
 カプセルを覆うフェアリングを閉じているのだ。
 やがて、その作業の音が止んだ頃、船内に通信音が響いた。
 続いて
「こちら、発射管制です。トリフネ船内、聞こえますか?」
 と音声連絡が入り、眼前のモニターに管制官の顔が映し出される。
「聞こえています」と陸くんが応答する。
「お二人の搭乗とカプセルの準備が完了した旨、連絡を受けました。そちらの状況は
どうですか?」
「問題ありません」
「分かりました。これ以後は、全てコンピューターの自動制御になります。お二人に
して頂く作業はありません。その場で待機願います」
「了解」
「それから、事前にお約束した通り、船内からの映像音声信号を遮断します。もし、
不測の事態が発生した場合は無線通話で連絡してください」
「了解」
「次のこちらからの連絡は1時間40分後、発射の20分前です」
「了解です」
「では、そちらからの信号を切ります」
 その通話と同時に、船内に設置されたカメラの赤ランプが消える。
 眼前のモニター内の管制官が、私達に向けていた視線を外し、他の作業を始める。
「通信は切れたみたいだね」
「うん」
「ちょっと待って。確かめてみよう……」