それからは、昨日の訓練以上に慌ただしかった。
 最後のメディカルチェックを受けたのち、打ち上げに備えた医学的措置を受ける。
 シャワーを浴び、体を浄める。船内用のインナーを装着。
 その上に船内服を着る。
 船内服は昨日来た訓練服とほぼ同じで、上下のツナギになっている。
 更にその上に与圧服を着る。これは、船内の気密度が漏れた場合に備えるもので、
密閉された作りになっている。そのため、背中の穴から中に入り込む。
 与圧服は結構重くて、体を動かすのにも一苦労。まるでロボットになった感じだ。
 これでは歩くだけで体力を消耗する、と思っていたら、ここから先は全てカートに
乗って移動するのだと説明された。

 その後、谷田部首相と面会した。
「君達の協力に感謝する。成功を祈る」
 と手を握られて、送り出された。

 私達はカートにのったまま建物を出て、ロケット発射台へ向かう。
 二本の塔に挟まれたトリフネロケットが眼前に迫る。
 高さ60メートル。その巨大さに圧倒される。
 発射台の直ぐ近くでカートを降り、最後の小用を済ませてエレベーターに乗る。
 エレベーターが上昇。少しばかりのGを感じる。
 打ち上げの時には、この何倍ものGを受ける事になる筈だ。
 いよいよかと思うと、緊張で足が震える。