翌朝、早起きして家を出た。
 この二週間ほど、いつも早起きしている。
 日が高くなってからの登校は暑いから、というのが理由だが、もう一つ訳がある。
 ここ最近、シーちゃんとアッキーが頓に仲良くなって来たのだ。
 家がわりと近いので、以前は三人して登校するのが普通だった。だけど、やっぱり
二人きりにしてあげるのが親切と言うものだ。
「なんでよ。三人の方が良いよ」とシーちゃんは言うけれど、獅子は我が子を千尋の
谷に突き落として鍛えるというからなぁ。って、例えが違う?
 私にも少しの寂しさはあるけれど、あの人達は二人きりにして上げたほうが良い。

「美幸は、誰か好きな人いないの?」とシーちゃんにはよく聞かれる。
「うーん。そういわれましてもねぇ」と応えるのが常。
「美幸はファザコンだもん。美幸のお父さん以上の人を探すなんて、至難の技だよ」
となるのが、お決まりのパターン。
 私の父は仕事柄不在がちで、たまに帰宅したときは存分家族サービスしてくれる。
 そのために、父親の良いところばかりが見えているのだ、とシーちゃんは言う。
 確かに私は父が好きだし、ある種理想の男性だとも思っている。
 そんなわけで、17歳のこの日まで、私は父以外の男性を好きになった事がない。
 嗚呼、私、誰かを好きになる日がやって来るのだろうか。
 などと、取り留めのない事を考えながら学校に向かう。