ここまで来て、陸くんは頑なに話を拒んでいる。
 ある考えが頭に浮かぶ。
―ひょっとして、始めから秘策なんて無いんじゃ……―
―いや、そんな事は無い。君を助ける策はある―
―だったら、話して欲しい―
―それは……―
 何故だ、なぜ陸くんはその秘策を話したがらないんだろ。
 それに、別な疑問もある。

―ねえ、陸くん。どうして、「私達」ではなく「君の」って言い方するの? もしか
して、私は無事だけど、陸くんは危険な目に合うってこと?―
―……―
―陸くん―
 答えはない。

「陸くん」思わず口を開いた。
「もう、よそう。その時が来たら分かる」
 目を開けた陸くんが応える。
「だから、その時っていつなの?」
「……寝よう。明日は早い」
「答えを聞かないと、眠れないよ」
 陸くんが私を見つめる。
 と、次の瞬間、陸くんが布団のなかに頭を沈め、モゾモゾとうごめきはじめた。
 暫くして布団から顔を出した陸くんが、私を見つめる。
 それと同時に
―美幸さんは疲れている。とても眠い。直ぐにでも眠りたい―
 という陸くんの声が届いた。
 あれっ? でも、いま陸くんの口は、開いていなかったような気がする?
 私の見間違い?