「分かった……」
 観念したのか、陸くんが恥ずかしそうに寝室に入って来た。
 自分で招じ入れておきながら、同じ寝室で男子と二人きりになると、緊張する。
 心臓がドキドキし始めた。
 でも、これは陸くんと一緒にいるのが怖いからじゃぁない。多分……別な理由だ。
 
 陸くんが、ソファにあったミニクッションを抱えながら寝室に入って来た。
 用意されたパジャマが大きすぎて、ダブダブ。
 オドオドしてる様子だし。
 なにそれ、陸くんの方が女の子みたいで、なんだか可笑しい。

 私が左に、陸くんが右のベッドに潜り込む。
 陸くんがモゾモゾと動いて、私に背をする形で体を横に向ける。
 あれっ? もう、寝てしまうの?
「あの。陸くん……」
 返事はない。
「陸くん。もう、寝ちゃったの?」
 又も返事は返らない。静かだ。
「あの!」と声を少し大きくしてみる。

「起きてる……」
 やっと返事を貰えた。
「寝るのも仕事って言われたけど……、簡単には眠れない……」
 溜め息交じりに陸くんが応える。
「私も眠れそうもない……。それに、陸くんとお話したい事があるの……」

 私が話しておきたい事とは、陸くんの『取って置きの解決策』についてだ。
 解決策の内容が何であれ、それは私の超能力の応用に違いない。
 だとしたら、事前にその内容を知っておきたい。
 場合によっては練習をしておく必要があるだろう。