丁寧に体を洗ったので、すっかり長湯になった。
 ほてった体のままリビングに戻ると、陸くんがソファーに寝床を作っているところ
だった。
「陸くん。なにやってるの?」
「男子と女子が一つ部屋で寝るのは拙いだろ。だから、僕はこっちで寝るよ」
「そんな……、嫌だなんて思ってない。それに、ソファーでは充分寝れないでしょ」
「僕は大丈夫だよ」
「でも……」
「平気だって。君はもう寝室に行って。寝るのも仕事、議論してる時間はないよ」
 と、無理矢理寝室に押し込められてしまった。

 私と入れ代わりに陸くんがお風呂に入った。
 それと同時に私は寝室を抜け出し、陸くんがソファーに作った寝床から寝具を剥が
して寝室に戻した。
 陸くんが地上で眠るのは今晩が最後かもしれない。せめて、ちゃんとしたベッドで
寝て欲しい。そんな思いからだった。
 暫くして、陸くんがお風呂から出て来る。
 リビングに入った気配がする。多分、ソファーの寝具が無いことに気がついた筈。
 寝室のドアをノックする音に続き、
「あのぉ。ソファーの寝具が無くなってるんだけど、こっちに来てるの?」
 と、陸くんのか細い声が聞こえる。
 私は寝室のドアを開けて、陸くんと対峙する。
「陸くんも、ちゃんとベッドで寝た方が良いよ。ソファじゃ、疲れが取れないよ」
「いや……、でも……」
「私は陸くんと一緒でも平気。信用してるから。それとも、私と一緒じゃ、嫌?」
「そんなことは……」
「それに、話したい事もあるし……」