係員から受け取った与圧服を胸に抱きしめる。
 どうしました?
 異変に気が付いたのか、係員が訝し気に私の顔を覗き込む。
「な、何でも……」と応えたところで、涙がこぼれて来た。
 与圧服を抱いたまま、嗚咽を漏らす私。
 陸くんが駆け寄って来る。
「どうしたの?」
 父の名が書かれた納品書を陸くんの前に差し出す。
 陸くんは、そこに書かれた署名を見て、事態を直ぐに飲み込んだようだ。

「すみません。少しの間、二人だけにして下さい」
 係員の人達に部屋から出てもらい、二人きりになる。
「美幸さんのお父さんなんだね? この服を作ったのは」
「うん。父は、宇宙服開発のリーダーなの」
「この基地に居るの?」
「うん」
「会いたい?」
「会いたいよ。でも、会えない。私が、ソラシドレスキューだって分かってしまう。
それに、お父さんを苦しめる事になる」

「美幸……さん」
 陸くんが私を抱きしめる。
「すまない、辛い思いをさせて。でも、君はこのミッションが終わったら、いつもの
生活に戻れる。お父さんとも、また会える」
 陸くんの体温を感じる。陸くんの言葉が心に沁みる。
 嗚呼。もしも、陸くんがそばに居てくれなかったなら、私はこのミッションに参加
する決心などつかなかっただろう。