「分かりました。ミッションが成功した暁には、お二人の勇気と功績を世界の人々に
伝えます。必ず」
 私の思考は、矢田部首相の言葉で遮られた。
「宜しくお願いします」
 そう答えながら、陸くんが矢田部首相に右手を差し出す。
 矢田部首相がその手を握り締める。
「美幸さんも」陸くんに促されて、私も手を重ねる。
 
 こうして、セルベルク軌道変更のミッションは開始された。
 けれど、私には陸くんの言った方便の意味が、最後まで分からないままだった。