―美幸さん。谷田部首相は、僕達にセルベルク行きの判断を委ねた風にしてるけど、
多分、拒否は出来ない―
―どういうこと?―
―セルベルクの軌道変更が出来るのは僕達だけだ。僕達が拒否したら、人質をとって
でも僕達をセルベルクに行かせる筈だ―
―人質?―
―僕達の家族を探し出すか、或いは、僕達の住んでいる地域の人たち全員を、人質に
する―
―そんな……。考え過ぎじゃ―
―そうかもしれない。でも、それほど事態は逼迫してるって事だよ。美幸さん。君の
本心を聞かせて欲しい―

―本心?―
―君は、セルベルク行きを望んでいる?―
―それは……―
―……―
―地球を救うために、私達がセルベルクに行かなくちゃいけないのは、分かってる。
でも、本心は行きたくない。家族や、友達と離ればなれになって、宇宙の彼方に行く
なんてイヤ。どうしようもなく怖い。私は、まだ、その覚悟が出来ていない―

 私は、陸くんからおでこを離し、両手で顔を覆う。
 泪が流れ落ちる。
 駄目だ。私は弱い人間だ。
 超能力を人の役に立てると言いながら、最後に保身を考えてしまうなんて。