ドアが閉まるのを確かめると、陸くんはドアに近づいて、向こうの様子に聞き耳を
たてる。それが終わると、テーブルの下や椅子の下、部屋のあちこちを調べ始めた。
「どうしたの?」
「盗聴されてるかもしれないからね」
「盗聴?」
「念のためだよ」と言いながら、陸くんは捜査を続ける。

「すぐ分かる場所には、仕掛けないか……。仕方ない、サイコメトリーで話そう」
 と言うと、陸くんが私の眼前に顔を近づけてきた。
 私がビックリしていると
「おでこ同士をくっつけて」と陸くん。
「な……、何?」
「サイコメトリーだよ。外の人に話を聞かれたくない」

 ※サイコメトリー:触れた物体に込められた人の記憶・感情を読み取る能力

 陸くんは、私達の会話が首相達に盗聴されているのを心配しているのだろうか?
 考えすぎのような気もするけど……。
 てか、いくら親しくても、男子とおでこ同士をくっつのは恥ずかし過ぎる。
 私が躊躇していると、構わず陸くんがおでこを引っ付けて来た。
 陸くんのおでこが私のおでこと接触する。陸くんの体温を感じる。
 私の顔が茹で上がる。
 恥ずかしさのあまり、声も出ない。

―美幸さん。聞こえる?―
 頭の中で声が聞こえた。
―り……陸くん?―
―どうやら、通じるみたいだね。このまま話そう―
 私達、いつの間に、こんな事ができるようになったんだ。凄いな。