「美幸さん。落ち着いて」
 陸くんが私の手を握る。
 縋るように、言葉の主の方を見ると、力強い眼差しと出くわした。
「大丈夫。任せて」
 その言葉に、力を得て涙を拭う。

「首相」
 陸くんが、矢田部首相に正対して威儀を正す。
「いま伺ったミッションについて、僕達だけで話をしたいと思います。少しの間だけ
二人きりにして貰えますか?」
 数舜の沈黙のあと、首相は「わかりました」といって立ち上がり、原口局員に対し
目配せをする。原口局員も目配せで応じて立ち上がる。
「我々は席を外しますが、切迫している状況ですので、お二方には、10分で結論を
出して頂きたい。誠に心苦しい限りだが……」

 10分? 10分ですって?
 自分達の運命を決めるのに与えられた時間が、たったの10分?!
 思わず抗議の言葉を発しそうになったが、陸くんに目で制止された。
「分かりました。10分で済ませます」
 陸くんの言葉に促されるように、首相と原口局員が部屋を出る。