「ソラシドレスキューのお二方」
 谷田部首相が苦しげな顔で口を開く。
「このミッションが、お二人に苛酷な運命を強いる事は、承知しています。ですが、
一国の首相として、お願いする。このミッションに協力して貰いたい」
 谷田部首相が頭を下げる。原口局員もそれに倣う。

 谷田部首相が懇願する理由は理解できる。私達がセルベルクに赴く以外に、地球を
救う手立てはないのだから。でも、それは私達にとって、セルベルクへの片道切符。
私達が、再び地球に帰ってくることはない。

 怖い。こわい。こわくて体の震えが止まらない。
 人の役に立ちたい。その思いで、ソラシドレスキューの活動を始めた。
 地球とセルベルクの衝突を回避する。
 これ程、人々の、人類の役に立つことは、他にはない。
 だけど……、そのために私の未来は無くなる。
 お母さんとも、もう会えない。こんな事になるとは知らず、お別れも言わずに家を
出て来た。シーちゃんや、アッキーとも二度と会えない。他の友達や、先生とも。
 運命の人との出会い、楽しい家庭、私の子供達。
 そんな未来が、私の前から、消える。

 ああ、超能力など使えない方が良かった。
 超能力者になど、成らねば良かった。
 ノブレス・オブリージュ。高貴なるものの責務。
 力を持つという事が、これほど己を苦しめるなんて、思ってもみなかった。
 泪が溢れた。
 両の頬を泪の雫が絶え間無く、流れ落ちた。