谷田部首相が私達の前に席を移し、強い眼差しで口を開く。
「セルベルク到着時点で、トリフネに地球帰還分の燃料は残っていません。地球上に
君たちを迎えにいけるロケットは存在しません。ですから、セルベルクが地球に接近
した際に、君達自身の力で、地球に帰還して貰うより、方法はないのです」

「そ、そんな……」陸くんが絶句する。
「どうしたの? 地球の近くを通るなら、私達の超能力でセルベルクから飛び立てば
良いんじゃない?」
 陸くんの不安顔に突き動かされて、私は口を開く。
「セルベルクからは、飛び立てるだろう。だけど、地球に帰還するためには、正確に
軌道制御しなくちゃいけない。失敗すれば、僕たちは宇宙を彷徨う事になる。もし、
出来たとしても、宇宙服だけで大気圏突入したら、地上到着前に燃え尽きてしまう」
「それじゃあ、私達は……」
「セルベルクに行ったら、二度と地球には帰れない」

 首根っこを冷たい手で捕まれたような気持ちになった。
 地球を救うためには、私達がセルベルクに行かなければならない。
 でも、そうすると私達は二度と地上に戻れない。
 また、胸が苦しくなってきた。呼吸が早くなる。
 体が冷たくなり、震えが止まらなくなった。
 陸くんが私の手をとって強く握りしめる。