さあ、準備は出来た。
 出発するために、建物の外に出る。
 その時、陸くんが名残り惜しそうな眼差しで部室の方を振り返った。
「どうしたの?」と声をかけると
「いや。何でもない」と返された。

 陸くんと私は、いつものようにタンデムに並ぶ。
 陸くんの腰に手を沿え「行くよ」と合図を送る。
 二人が同時に空を見上げる。
 足が大地を離れ、私達の体は急上昇していく。
 数百メートル昇った所で、水平飛行に移る。
 ここからの飛行はナビ役の陸くんに任せることになる。
「最高速で飛んで、二時間位だ」と陸くんに告げられた。

 谷田部首相は、私達ソラシドレスキューに何を依頼しようというのだろうか?
 私達の行く先に何が待っているのか。
 それは、今の私達には、分からない。
 でも、きっと、それはセルベルク危機に際して役立つものなのだ。
 私は、期待と不安で胸が張り裂けそうになりながら、雲の上を飛びつづけた。