その夜は、お母さんの寝室に布団を持ち込み、手を繋いで寝た。
 親子で一緒に寝るなんて、いつ以来だろうか?
 小学生の時にアメリカに渡ってから、子供部屋で一人で寝る習慣になった。その時
以来だから、7年ぶりだ。
 渡米前は、お父さんに挟まれて、親子三人で川の字になって寝ていたっけ。

 もう、私達親子が川の字になる事はない。お父さんの顔を見る事すら出来ない。
 非常事態宣言で、交通機関は止まっている。
 前に、お父さんが帰って来た時、もっと甘えておけば良かった。
 一杯、話をしておけば良かった。
 沢山、御馳走してあげれば良かった。
 私が、ソラシドレスキューの一員だって、伝えておけば良かった。

 一杯、人命救助したよって、大勢の人から感謝されてるんだよって、そう、伝えた
かった。
 お父さん、喜んでくれただろうか。良くやったねって、褒めてくれただろうか。
 でも、それは、もう叶わない願い。

 布団の中で、お母さんの手を握り、声を出さずに涙を流す。
 お母さんが、私の手を握り返す。
 お母さんも泣いている、お母さんだって、お父さんに会いたいんだ。
 私たち母娘は、そうやって眠れぬ夜を過ごした。
 いつの間にか、東の空が明るくなっていた。