瞬時に壊滅、地域的荒廃、全地球規模の天候異変。
 絶望的な言葉が並ぶ、その言葉を受け入れる事を頭が拒否している。
『人類の生存が脅かされる』
 平穏だった日々が、一週間後には存在しない。
 私自身が、私の家族が、私の住んでいるこの町が、故郷が……消える。

「この未曾有の危機に際し、日本国政府をはじめ世界中のあらゆる国々が、一致団結
して行動する事を決めました。その取り決めに従い、日本政府はこれより非常事態を
宣言致します。日本国民の皆様、ならびに日本滞在中の外国籍の皆様。これから説明
します内容に付きましてご理解の上、秩序だった行動をされる事を切望します」

 TVの画面からは、矢田部首相が冷徹に非常事態宣言の内容を語り続けている。
「一つ。全てのエネルギー・情報資源はセルベルク危機のために集約します。本日、
只今より、電気・水道・ガス・医療・食料輸送など、直接にライフライン維持に関連
する業種を除き、全ての企業活動の自粛をお願い致します。これに関与しない方々は
出来るだけエネルギー消費を抑えた上で、自宅待機をお願いします」
 この後、矢田部首相の説明が延々と続く。
「一つ。全ての公共機関は、直接にライフライン維持に関係する業務、消防、医療、
治安維持、災害救助を除き、一切の業務を停止します。一つ。全ての交通機関は…」