私ってエスパー?
 アレは私がやったの?
 先ほどの光景を思い返しながら、自宅への道を歩く。

 いやいや、そんな筈がない。只、何かにぶつかって跳ねただけなんだ、あの車は。
 でも、空中に浮いたように見えたのは何でだろう。絶対に重力の法則に反してた。

 そうじゃない。あれは只の見間違いだ。何かの錯覚に違いない。
 でも、それも変。どんな錯覚したら自動車が浮いて見えるの。しかも、三人とも。
 事故のあった場所から自宅まで、堂々巡りの思考を繰り返す。
 足は前に進んでいても、頭の中の考えは一歩も前に進まない。

 こんな時、お父さんが、居てくれれば良いのにな。
 お父さんはガチガチの理系だから、きっと直ぐに理屈が分って、懇切丁寧に説明を
してくれるに違いない。
 でも、九州に単身赴任中で、次はいつ帰って来るか分からない。
 逆に、お母さんには、この話は出来ないな。
 私のお母さんは思い込みが激しくて、行動力があるから、どんな方向に突っ走るか
分かったもんじゃない。
 私が小さい頃、河原で拾った変わった形の石を、恐竜の化石に違いないといって、
お父さんの知り合いの学者さん達が、総動員させられた事があったっけ。
「私、エスパーかも」なんて口にだしたら、アウトだ。
 そんな事を考えながら、足を動かす。