変だなぁ。と思いつつ、部室のドアを開ける。
 ヒャァ! キャッ! ワァ!
 三つの驚きの声が同時に上がる。
 私の顔が真っ赤に染め上がる。
 ゴ、ゴメンナサイ!! と叫んで、慌ててドアを閉める。
 シーちゃんとアッキーが、正にキスしようとする瞬間に、出くわしたのだ。

 廊下に立ち、動悸を鎮める。顔の火照りを冷ます。
 思い出すまいとしても、アッキーとシーちゃんのキスシーンが蘇る。
 その光景を振り切るために、顔をブンブンとさせる。
 頭の中からシーちゃん達の情景は消えたけど、代わりに陸くんの顔が現れた。
 な、なんでよ!?
 納まっていた、鼓動がまた早くなる。顔から日が昇ったように熱くなる。
 手の扇で、頬を扇ぎ続けた。

 漸く私が平常心になったころ、部室のドアが開いて、恥ずかしそうにシーちゃんが
出て来た。
「ごめんね」「ゴメンネ」
 とお互いに謝りあう。でも、何に対して謝ってるんだろうか? 不思議だ。
 有耶無耶のまま、二人一緒に部室に入る。
「よおっ」
 と普段と変わらぬ様子でアッキーが返事をする。
 素知らぬ風で、パソコンで調べものをしているが、アッキーは首筋まで真っ赤だ。
 あなたたち、キスは初めてじゃないんでしょ。
 等という野暮なことは、可哀そうだから訊かずにおこう。