「そ、そんな訳ないよ」
 シーちゃんの問いに答え、同時にその言葉で自分の疑念を抑え込む。
「でも、私には美幸がやったように見えた」
「俺にもそう見えた」
 それまで、黙っていたアッキーが口を開く。
「でも、あの車、何かにぶつかって跳ねたんだよね」と思いつきを言ってみる。
「そんな感じじゃなかった。完全に空中に浮いていたよ。それに、美幸の手の動きに
合わせて動いていた」
 アッキーが、その時の様子を描写する。

「そ、それは……」
 確かに私の手の動きに合わせて、車が動いたことは自覚している。
 でも、だからと言って私は車を操作したつもりなど全くない。只、咄嗟に手が出た
だけなんだ。
「……私。なにもやってない」
 正直に有りのままを言葉にする。
 シーちゃんとアッキーが顔を見合わせる
「そ、そうだよな。良く考えたら、手も触れずに物を動かすなんて、出来ないよな」
 とアッキー。
「触れたとしたって、人の力で車は投げ飛ばせないでしょ」
 シーちゃんが頷く。
「目の錯覚とかだよ、きっと」と言っては見たが、自分でも納得はしていない。
「そうだな。錯覚だ、きっと」
「うん。錯覚、錯覚」
 三人とも同じ意見に纏まった。
 でも、三人とも得心出来ていない事は、顔色をみれば明らかだ。
「とにかく、けが人が出なくて良かったね」
 そんな風に、無理やり話を纏めて、二人と別れた。

 後になって思えば、これが初めて超能力と出会った瞬間だったのである。