陸くんの二番目の変化は、ソラシドレスキューの活動に対する取り組み方だ。
 今までの陸くんは、ソラシドレスキューの活動に対して懐疑的だった。
 救助で手を抜くことは無いのだけれど、どこかしら斜に構えているところがある。
 不都合な事が起こったりすると、直ぐに「ソラシドレスキューなんて止めよう」と
言い出す。家に引きこもったことだってある。ネットの誹謗中傷に対しても過敏だ。
 そもそも、陸くんは超能力を公にする事からして反対だった。

 そんな陸くんが、昨日の貯水塔での一件を境に、様子が変わった。
 肝が座ったというか、耐性がついたというか、悪意や中傷に対して動じなくなった
のだ。
 連絡用掲示板への誹謗中傷の書き込みは、今も続いている。
 でも、陸くんは以前ほどは、気にしてはいない様子。
 あの後、突撃TVを真似た偽通報が幾つかあったけど、現地に着いて嘘が分かって
も、文句一つ言わずに淡々と次の現場に足を運んだ。
 他人がどう思うかは関係ない。自分の使命を果たすだけ。
 そんな発言をするようになった。

「全ての生き物は、何かの役割を果たす為に、生まれて来る」
 私が貯水塔の中で発したこの言葉に、陸くんはいたく感動していた。
 その時、陸くんの心に、どんな想いが去来したのかは、分からない。
 でも、きっとその言葉が、陸くんを良い方に変えたんだ。
 私は、そう信じたい。