翌日から、陸くんに変化が起きた。

 一番の変化は、陸くんが私を「美幸さん」と呼ぶようになったことだ。
 それまでは、「天野さん」と呼ばれていたので、下の名前を呼ばれるのは、何とは
なしにこそばゆかった。
 でも、その名で呼ばれるのは、本当のところ嬉しかった。
 私と陸くんの距離が、近づいたように思えて、心が弾んだ。

 陸くんの私に対する呼び方が変化した事に、シーちゃんは逸早く気が付いたようで
「良かったねぇー。美幸ィ(ニヤニヤ)」と意味深な笑みを私に向ける。
「べ、別に……」と応じてみたが
「だって、美幸は陸くんのこと好きなんでしょ……」と突っ込まれる。
「うーん……そうなのかなぁ……」
 答えは自分でも分からない。
 そりゃ、陸くんが好きか嫌いかと問われたら、嫌いでない事は確かだ。
 嫌いだったら、ソラシドレスキューの活動など出来はしない。
 だから当然”好き”であることに間違いはない。

 だけど、その好きが、ソラシドレスキューの仲間としての”好き”なのか、恋する
相手としての”好き”なのか。自分でも良く分かっていない。
 嗚呼、でも、そんな事を考えるだけで、頬が蒸かし上がった餡マンのようになる。
 これって、やっぱり、誰かさんに恋してるって意味?

 私が今まで好きになった男性は、お父さんだけだ。
 同年代の男性を好きになった経験はない。……と思っている。
 だから、自分でも自分の今の感情が分からない。
 陸くんの事を想うたびに、胸に去来するこの暖かく切ない感情は、何なのだろう?
 これが、人を恋するっていう事なのだろうか?