そういわれて、陸くんとともに離陸準備の態勢に入る。
「じゃあ、行こう」と陸くんに促され、半信半疑のまま、飛行のイメージを作る。
 フワリ。
 体が浮いた。
 やった。超能力が戻った。
 そのまま、貯水塔内を上昇し、明り取りの窓をくぐって外に出る。
 久方ぶりの外の空気だ。みずみずしくて、美味しい。
 いつの間にか、日が大きく傾いていた。

 色んな事のあった一日だった。
 偽の救助要請に騙され、ヘリプレーンと空中戦をし、貯水塔内に閉じ込められた。
 でも、私が一番印象に残っているのは、陸くんと指が触れ合った時だ。
 電気が走ったような衝撃を覚えている。いや、本当に電気が流れたわけではない。
あの時に感じた高揚感を、私が電気ショックのように感じているのだ。
 同じ瞬間、陸くんは、どうな風に感じてくれていたのだろう。
 とても気になるけど、声に出して聞く勇気はない。

「美幸さん。帰ろう」
「うん」
 もう少し、陸くんと漂っていたかったけど、私達はAI部を目指して飛び始めた。
 私達は夕陽に向かって飛ぶ。
 夕空を朱く染める太陽が、とても綺麗だった。