でも、言葉は通じずとも、仲間が一人(一羽?)増えたことは、心強かった。

 ネロ。ネロ。
 と呼ぶと、ネロがピョンピョンと飛び跳ねて、私の方にやってくる。
 私の足元に来たネロは、首を右に左に幾度も傾ける。
 その様子は、何とも愛嬌があって可愛らしい。

「ネロが僕以外の人に懐くのを初めてみた。ネロにも、美幸さんの優しさが分かるん
だね」
 陸くんが、私を褒めるような事を言った。
 てか、陸くんが私を下の名前で呼んでくれたのは、今が初めてだ。
 そう呼ばれた事が、嬉しかった。
 なぜだか、顔が赤らむ。
 その事が恥ずかしくて、
「ネ、ネロって、ど、どういう意味なの?」
 と、思わず話題を変える質問をしてしまう。

「ネロは、イタリア語で黒の意味だよ」
 意外な答えだった。
「白いのに黒なの?」と問い返す。
「こいつだって、望んで白く生まれた訳じゃない。でも、そのせいで仲間からイジメ
られていた。だから、せめて名前だけでも『黒』にしてやろうと思ってさ」
「そうなんだ。ネロ……、良かったね、ご主人にいい名前を付けて貰って」
 陸くんと目が合う。
 その優しい眼差しの虜になり、私達は暫くの間、見つめ合った。