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 そのまま時間が過ぎた。
 バササッ。
 羽音がして、明かり取りの窓に鳥が止まった。
 白いカラスだ。
「ネロ!」陸くんが叫ぶ。
 それに呼応かのするように、ネロと呼ばれたカラスはカァと鳴き、陸くんの傍らに
舞い降りた。
「ネロ。僕がここに居ることが分かったんだね。ありがとう、来てくれて」
「その子、ネロっていう名前なの?」
「ああ。前に他のカラスにイジメられて弱ってたところを助けたら、懐かれたんだ」
 ネロが陸くんの腕、肩、頭をピョンピョンと飛び回る。
「ごめんなぁ。ネロ。今日は餌を持ってないんだ」
 陸くんの言葉に、ネロがカァと応じた。
 その様子が、ほほえましく。私の唇に笑みが戻る。

「そうだ。ネロ。お守りを探してくれないかな。この位の大きさで、細くて黒くて、
ツルツルしてる」と手で5センチほどの長さを示す。
 しかし、カラスに人語が分かるはずもなく、ネロは陸くんの足元の地面をほじくる
だけだった。