それから救急車が来るまでの間、私は陸くんの手をずっと握っていた。
「ありがとう。天野さん」
 別れ際に、陸くんに礼を言われた。
「大したことなくて、良かったね」
 そう言って、私たちは、陸くんが救急車で運ばれていくのを見送った。

 *****

「あのさ、美幸」
 救急車が見えなくなったころ、シーちゃんから声を掛けられた。
 その顔が酷く真剣なのに驚く。
「アレ。美幸がやったの?」
 そう言って、シーちゃんが坂の下の方を指さす。
 そこには、用水路に後方から突っ込んだ宅配便の自動車が見える。周りには人垣が
出来ている。
 そうだ。
 さっき、宅配便の車が陸くんに向かって斜面を下って行った時、私が手をかざした
瞬間に車が宙に浮いたように見えた。
 アレって、私がやったのか?