「陸くん、陸くん。起きて」と呼びかける。
 うう。うーん。と反応する。気が付いた。
 こういう時は、揺り動かしたりするのはダメなんだ。
「陸くん、陸くん」と呼びかけを続ける。

「ハッ」
 突然、陸くんが目を開け、上半身を起こした。
「良かった。気がついたのね」
「えっ、ここは?」
「陸くんが前後不覚になったら、迷走飛行して、ここに落ちたの」と今までの経緯を
説明する。
「そうか……。天野さん、怪我はない?」
「私は大丈夫。陸くんは? 痛いところとか、痺れてるとかない?」
「多分、大丈夫」と言いながら、陸くんが自分の胸の辺りを触る。

 あっ!
 と叫ぶと、陸くんは体の他の部分を手で探り始めた。
 陸くんは何かを失くしたらしく、自分の身体に続いて、周りの地面を入念に捜し始
めた。
「どうしたの?」
「お守りの首飾りを失くした。5センチくらいの、細くて黒くて、ツルツルした石」
 私も一緒になって探してみる。だが、それらしい物は見つからない。
 陸くんは、床の端から端、手の届く範囲の壁、塔に残されたガラクタ、等々、隅から
隅まで、懸命に探しつづける。
「大事な物なの?」
「うん。あれがないと、大変なことになる……」