公園内には、重要文化財の変電所跡がある。
　その建物をギリギリの高さで飛び越える。
　その先には、古い貯水塔。
　直径数メートル、高さ二十メートル程のコンクリートの塔だ。
　その塔に向かって、一直線に進む。
　駄目だ！　ぶつかる！

　と思ったら、貯水塔の壁面に設けられた明り取りの窓をくぐり抜けた。
　塔の中に入り込み、内側の壁にぶつかり、地面に落下する。
　ボンボンボンと、体が床の上でゴムボールのように弾む。
　バリアが残っていたお陰で怪我は免れた。
　床に横たわる陸くんに駆け寄る。
　何かに引っ掛かったのだろうか、レオタードの胸の部分が大きく裂けて、肌が露に
なっている。
　同年代の男子の肌をこんなに近くで見るのは初めてだ。ちょっと恥ずかしい。
　などと言っては、いられない。
　口元に耳を近づけ、呼吸を確かめる。大丈夫、息をしている。
　首筋に指をあて、心拍を確かめる。こちらも大丈夫、心臓は動いている。