恐怖のあまり、目を瞑っても、心臓が持っていかれそうな無重力感は収まらない。
 いつまで、続くのこれ――――――――――――――――――――――――。

「水平飛行に移る」
 その言葉と同時に、急減速。エレベーターが止まる時の減速感。
 強力な下方へのG。
 数瞬ののち、下へのGが消え、それに引き続いて、右へ左へのGが私を襲う。
 目を開くと、私と陸くんは川の真上を飛んでいた。水面からの距離四五メートル。
 バラララララララ。
 直ぐ後ろにヘリプレーンのローター音。駄目だ、まだ振り切れていない。

 川の蛇行に沿って飛び続ける。
 右、今度は左、また右。ヘリプレーンも追い縋ってくる。
 川下りの船とすれ違う。船上の観光客たちが、驚きの顔で私達を見上げる。
 その上をヘリプレーンが通り過ぎる。ローターの風が水飛沫を巻き上げ、観光客が
ズブ濡れになる。
 更に、川の上流に向かって飛び続ける。辺りの景色が山がちになってきた。
 前方に橋が見える。と思う間もなく、橋が迫って来た。
 橋の下を掻い潜って避ける。
 追い縋るヘリプレーンは、橋の上を飛び越える。
 次の橋が迫る。
 私達は橋の下をすり抜け、ヘリプレーンは橋の上を通過する。
 橋と交錯する度に、これを繰り返す。