キュィ―――ン、コォ――――――、ゴォ―――――――――。
 私達が走り出すのと同時に、後方から聞きなれぬ機械音が聞こえ始めた。
 後ろを振り向くと、飛行機の翼端のエンジンが陽炎を吐き出し、ローターが低速で
回転を始めた。
 あのヘリプレーン、故障してたんじゃ? それとも、修理完了したのかな?
 ローターの回転が早まる。エンジンの音が高くなる。

 こっちです。先ほどの男性に呼ばれ、慌てて振り向く。
 気を取り直して、男性に続いて走る。
 校舎の角を曲がった場所に、人を乗せたストレッチャーがあり、周囲に救急隊員が
人が集まっていた。私たちの到来で、その人たちが道を開ける。
 ストレッチャーに乗っているのは、30才前後の女性だった。
 どこか痛むのだろうか、苦しそうな表情をしている。
「大丈夫ですか」と顔を覗きこむ。

 と、突然その女性が目を開け、私の手を掴んだ。
 それに合わせるように、救急隊員達が私達を取り囲む。
「なに、ナニ、何?」
 陸くんと私が呆気に取られていると、校舎の陰から、カメラやマイクを持った人が
駆け出して来た。
 ストレッチャー上の女性が、上半身を起こし
「皆さーん。突撃WebTVの槍杉でーす。本日はー、ソラシドレスキューの秘密に
突撃でーす」とカメラに向かってしゃべり始める。
「今日は視聴者が一番興味のある点について、突撃取材します」
 女が私の手を引っ張る。私はバランスを崩し、女に抱きすくめられる形になる。
 女が、私のマスクを引きはがしにかかる。