どうした、どうした。人が集まって来る。
 誰か倒れてるぞ!
 怪我してるのか?
 救急車呼べ、救急車! 
 声が交錯する。

「だ、大丈夫ですか!?」
 宅配便の運転手が、陸くんに駆け寄る。
 私達三人も、陸くんの元に走り
「大丈夫?」
 と声をかける。
 陸くんは、顔を歪めて目をつぶっている。気絶しているのか?
 体の様子を見ると、どこにも怪我はしていないようだ。

「陸くん。大丈夫?」もう一度、陸くんに声をかける。
「……僕……、僕は……」
 陸くんが目を開く。良かった、正気に戻ったみたいだ。
「大丈夫よ。怪我はしてないみたいだから」と安心させる。
「君は……」
「私? みゆき。天野美幸」
「美幸…さん…」
 私の名前を呼ぶと同時に、陸くんがスーッと瞼を閉じた。
 陸くん、陸くん。名前を呼びながら陸くんの手を握る。
 陸くんが握り返す。
 目を閉じたままの陸くんが、静かな呼吸になる。