良い事と言えば、他にも喜ばしい事がある。
 私の、あるいは私達のと言うべきか。超能力に進化の兆しが現れたのだ。
 それは微妙な変化であって、本当に進化と呼べる代物なのか、分からない。
 でも、私達はそれを確実に感じ取っている。

 進化の一つは、テレパシーだ。
 私は、言葉を交わさずとも、陸くんが何を考えているかが、何となく分かる。
 陸くんの方も、私の考えを感じ取っているようだ。
 読み取れるといっても、心の機微まで詳細に分かるという訳ではない。相手が次に
何をしたいかが、何となく分かる程度だ。所謂、阿吽の呼吸というやつだ。
 ただし、この力が使えるのは、私と陸くんが接触している時だけ。
 体と体が直接触れ合っているときにだけ、お互いの心を感じ合える。
 だから、正確にはテレパシーではなく、サイコメトリーの一種かもしれない。

 ※サイコメトリー:触れた物体に込められた人の記憶・感情を読み取る能力

 もう一つの進化は、陸くんが念動力を扱えるようになった事。
 正確には、私が発動した念動力を、陸くんが横から操作してるといった感じ。
 例えるなら、電動アシスト付きの自転車。
 動力源のモーターに相当するのが私の超能力で、それを陸くんが運転している形。
 これも、私と陸くんが接触しているのが条件で、私達は、シンクロと呼んでいる。
 実際の救助シーンでは、陸くんが助ける相手と対峙する事になるから、シンクロは
とても役に立つ。
 救助現場への飛行も、シンクロを使って陸くんにナビを任せる事になった。
 おかげで、私は大分楽をできるようになった。