「友達に関する記憶だけ……ですか?」
「ええ。子供の頃から、幼稚園、小学校、中学校までの、陸のお友達に関する記憶が
無くなったの。どんな友達がいたのか、どんな関わりを持ったのか、それらの記憶が
全部消えてしまった」
「……」
「授業の内容とか、学校行事は克明に覚えているのに、友達に関係する事だけが思い
出せない。そんな不思議な症状なの」
「……それは……、どうしてなんですか?」
「大勢の専門医に診て貰ったけれど、分からなかった。精神的な原因かも知れない。
そう言われた。思い出したくない心の傷があって、記憶を閉ざしたのではないのか。
そんな説明だった」
「イジメ……ですか?」
「そうかも知れない。でも、真相は分からない。私も夫も、陸に対して決して無関心
だった訳ではないのだけど、陸の友達について、私達も良く覚えていないの。私達も
記憶喪失なのかもしれないわね」と陸のお母さんが自嘲気味に笑う。
「……」
「だから、あの子にとって、友達付き合いは初めての事ばかり、あなた方には迷惑を
かける事があるかも知れないけれど、温かい目で見守っていて欲しい。どうか、お願
いします」
*****
陸くんは記憶喪失だった。
精神的なものが原因で、友達の記憶が欠落している。イジメが原因かもしれない。
私は、全くその事を気づかなかった。気づいて……あげられなかった。
超能力を人の役に立てたい。
そう、望みながら、私は陸くんに目を向けていなかった。
自分の都合だけを考え、陸くんを思いやることが出来なかった。
私は、陸くんに、どんな言葉をかければ良いのだろう?
「ええ。子供の頃から、幼稚園、小学校、中学校までの、陸のお友達に関する記憶が
無くなったの。どんな友達がいたのか、どんな関わりを持ったのか、それらの記憶が
全部消えてしまった」
「……」
「授業の内容とか、学校行事は克明に覚えているのに、友達に関係する事だけが思い
出せない。そんな不思議な症状なの」
「……それは……、どうしてなんですか?」
「大勢の専門医に診て貰ったけれど、分からなかった。精神的な原因かも知れない。
そう言われた。思い出したくない心の傷があって、記憶を閉ざしたのではないのか。
そんな説明だった」
「イジメ……ですか?」
「そうかも知れない。でも、真相は分からない。私も夫も、陸に対して決して無関心
だった訳ではないのだけど、陸の友達について、私達も良く覚えていないの。私達も
記憶喪失なのかもしれないわね」と陸のお母さんが自嘲気味に笑う。
「……」
「だから、あの子にとって、友達付き合いは初めての事ばかり、あなた方には迷惑を
かける事があるかも知れないけれど、温かい目で見守っていて欲しい。どうか、お願
いします」
*****
陸くんは記憶喪失だった。
精神的なものが原因で、友達の記憶が欠落している。イジメが原因かもしれない。
私は、全くその事を気づかなかった。気づいて……あげられなかった。
超能力を人の役に立てたい。
そう、望みながら、私は陸くんに目を向けていなかった。
自分の都合だけを考え、陸くんを思いやることが出来なかった。
私は、陸くんに、どんな言葉をかければ良いのだろう?